丹生川ダム広場竣工
先月末、弊社で設計に関わってきた岐阜県丹生川ダムが竣工しました。
ダム全体設計は、(株)クレアリア。管理棟設計は川村宣元氏。
われわれ設計領域は、管理棟周辺のダム展望広場の基本設計、実施設計、設計監理を担当しました。
丹生川ダムの事業計画調査が始められたのは、遡ること約35年、昭和50年頃。
建設に着手されたのが平成元年なので、それから数えても約20年が経っています。
100年単位の時間を相手にするダムは、土木を象徴する構造物の一つであることは間違いありません。
ダム本体の下流面は 漸縮導流壁という珍しい形式を採用しており、ダムの特徴的な立面を形成しています。
一方、上流面は複雑な3次元形状のコラムが特徴。
湛水した今となっては、間近で見ることはできませんが、このコンクリートが実に美しい仕上がりです。
ダム全体デザインを監修された篠原修先生は、竣工式のスピーチで以下のように述べられました。
「ダム建設という巨大な事業全体のなかで、これまで管理棟や広場の整備は取るに足らないものと思われてきた。
しかし、それは間違いであると思う。
なぜなら、このダムを訪れる市民が実際に利用し、手に触れる場所はこの広場なのだから。
この場所の出来が、このダムが市民に愛される施設になるかどうかを決める。
誰がやってもできるというものではない。そういった意味で、ここはうまくできたと思っている」
この広場では、訪れた人がダム湖や周辺の自然景観を楽しみ、またダムそのものの力強い姿に親しめるよう
いくつかの工夫をしています。
その一つが、ダム堤体の脇に設けた遊歩道。
ここからは、通常なかなか間近には見れないダム本体の姿を楽しむことができます。
(竣工式に訪れた方々の多くが、この場所から写真をたくさん撮っていました。目論み通り。笑)
管理棟の屋上には、外階段を使って自由に登ることができます。
せっかく来たのだから、いろんな場所、特に高いところから景色を眺めたくなるのは人情。
そんな気持ちを汲んでの仕掛けですが、管理を重視する公共施設では、実はこれもなかなかできることではありません。
広場は、湖に向かってだんだんと高さを下げることによって水面に開かれていく空間構成となっています。
管理棟周りの芝生広場と湖に開かれた展望広場の段差を処理するのが、
地場の石である褐色の花崗岩を使って地元の石工職人が積んだ石積み擁壁。野面積みが綺麗に仕上がっています。
この擁壁を基礎構造として利用したシェルターは、鉄板の切り出しのみで作ったもの。
湖周辺の景観へ開かれた視点場を作り出しています。
ダムとしては小ぶりで、緑に囲まれ、篠原先生の言葉を借りれば「女性的」な雰囲気の丹生川ダム。
ここが永く市民の方々に愛される場所になることを願っています (Y)。
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